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素人の乱~リベラルアーツ教育について思う 『池上彰の教養のススメ』

 乱、というほどの大げさなものではないが、素人が何を感じるか、考えるか、発想するかというのは、とても大事なことだと思っている。ある分野についての「専門家」といわれる人がいるとして、それ以外の「素人」というかその分野の専門家ではない人たちがいる。ある特定の分野については、大多数は素人である。それぞれの素人は、自分にとっての専門分野といえるものはあるだろう。たとえば、僕は一応、精神保健福祉を専門にしている。

自分にとって専門分野ではないこと、自分はその分野について素人だ、という立場でさらっと学んだところで何を感じるか、考えるか、発想するかということは大事だと思う。

池上彰の教養のススメ』は、東工大で取り組んでいるリベラルアーツ教育(教養教育)について共著の形で論じている。印象に残ったのは、「科学は価値判断をしない」ということ。東工大という工学を専門にする学生が大多数の大学であえて教養教育を大事にしていこうとしている。それは、「すぐに役に立つ学問はすぐに役に立たなくなる(陳腐化する)。歴史学、生物学、哲学、文化人類学などの一見、工学という専門分野からすれば役に立たなさそうな学問が、実は長い目で見て大切だし時代の変化に応じて専門分野を展開していく上で鍵となっていく。なぜならあらゆる営みは人間を土台にしている。人間についての知識というものがベースにない専門知識はとても脆く、応用がきかない。」といった趣旨のことが感じられて、とても腑に落ちた。

このことは、工学を専門とする人たちに限った話ではなく、あらゆる専門家にとっていえることだと思う。学ぶべきことはあまりにも多く、素人として学べることも論じることにも限りがあるし、その論は専門家からみれば穴だらけかもしれない。でも、素人(僕もかなりのド素人である)が自分の専門としないことについて、あえて関心をもち、感じ考え発言していくことは、とっても大事なことだと思うのだ。